1960⇒1969

猫(1969)

"EYE OF THE CAT"
アメリカ / ユニバーサル

[Staff]
制作:バーナード・シュワルツ / フィリップ・ヘイゼルトン / レスリー・スティーブンス
監督:デヴィッド・ローウェル・リッチ
脚本:ジョセフ・ステファーノ
撮影:ラッセル・メティ / エルスワース・フレデリックス
音楽:ラロ・シフリン
配給:ユニバーサル

[Cast]
ワイリー・・・マイケル・サラザン
カシア・・・ゲイル・ハニカット
ダニー叔母・・・エレノア・パーカー
ルーク・・・ティム・ヘンリー
ミルズ医師・・・ローレンス・ネスミス

[Story]
ワイリーとルークの兄弟、その父が死んだ時にその莫大な財産はワイリーが継ぐはずだったが、ワイリーは自由を求めて家を出たため、その財産は彼らの叔母ダニーが引き継いだ。ダニーは肺病を患っており、余命いくばくもない身で、日頃ルークが彼女の世話をしていた。

しかしダニーはワイリーを可愛がっており、ルークとは反りが合わない。自分が死んだ場合は、相続人のワイリーが不在がちのため、邸で飼っている100匹の猫にその財産を相続させるという遺言を残していた。

そこにワイリーが帰ってきた。風来坊のワイリーは生活費が底をつくと度々帰ってきてルークに金の無心をするのである。

そして、その財産を狙う一人の女がいた。美容院のダニー専属の美容師・カシアである。カシアはワイリーを誘惑し、叔母に遺言を書き換えさせ、上手いこと死に至らしめて、その財産を山分けしようと話を持ちかける。ワイリーは誘惑に負けてそれを了承した。

ワイリーの帰還を喜ぶダニーは、猫嫌いのワイリーのためにルークに猫を捨てさせ、相続人をワイリーにすると遺言書を訂正した。

その日以来、ダニーは死の危険にさらされることになる。全てカシアの仕組んだ罠だったが、その計画はことごとく失敗に終わった。

時期にルークが本性を現した。実はカシアとルークは恋人同士で、二人で共謀してダニーとワイリーを殺し、財産を我がものにしようとしていたのだ。

しかし、奇妙な出来事が起きた。捨てたはずの猫たちが次々に邸に戻ってきたのだ。猫たちは計画を知っていたかのようにカシアに襲いかかり、邸の植物園で彼女を死に至らしめた。

そこにはダニーがいた。ワイリーが命が危険にさらされているダニーに「ここが一番安全」と植物園に床を移させたのだ。

かくして、財産横領を目論んだ悪女は葬られた。

ワイリーの猫嫌いは財産を守るための演技だった。

遺言書を製作した弁護士は「遺言書に書かれた相続人が死んだ場合、その近隣の血縁者が相続人となる。猫には相続されない。」とワイリーに告げていた。

ワイリーはダニーとルークに「俺はこんな家にいるのはもうごめんだ。あとは二人でお好きにどうぞ。」と邸を去るのであった。

[Text]

「猫が人間を襲ったら・・・」という動物パニック映画を連想させるキャッチフレーズだが、その内容は、余命いくばくもない女富豪の甥と、その情婦による財産横領計画のサスペンスである。?

この作品で猫は、「状況を俯瞰して監視している不思議な守役」としての奇妙な存在である。まことに不気味に描かれているが、正義の味方であった。?

ワイラー役は「真説フランケンシュタイン」のクリーチャーを演じたマイケル・サラザン。カシア役には、「ヘルハウス」のゲイル・ハニカットである。?

ハニカットの「美貌を武器にした悪女ぶり」はなかなかのもので見ているだけで楽しい。?
そしてサラザンの、ろくでなしの悪者然とした演技も、実は「財産と恵まれない弟のために奔走している正義漢」だった、というどんでん返しの良いスパイスになっている。?

監督は「エアポート'80」のデヴィッド・ローウェル・リッチ、脚本はジョセフ・ステファーノ。?

60年代最後の、アメリカ映画の埋もれた逸品である。